DNA検査20:白人チェロキー05

米先住民02:チェロキーの悲劇02 と 
DNA検査18:白人チェロキー04 の続きです。

エリザベス・ワレン

DNA検査15:白人チェロキー01 でエリザベス・ワレンのネイティブアメリカンのDNA検査のニュースについて書きました。彼女が大学教授時代に「ネイティブアメリカン」として大学教授の名簿に登録されていたのにかかわらず彼女のDNAの結果は99.9%白人。ネイティブアメリカンと考えられる遺伝子は0.1%しかなかったというニュースです。

彼女がDNA検査の結果を発表したニュースに対してチェロキーインディアンの団体、「チェロキーネイション」が抗議文を発表しました。”DNA検査の結果は部族の一員になるための条件ではない。彼女のやったことは日々ネイティブアメリカンとして生活している人達の尊厳と主権を傷つけるものである。ネイティブアメリカンの部族のみが誰が部族の一員であるか決める権限がある。 

それに対して彼女は’’自分は部族の一員になろうとは思ったことはない”と答えました。(部族の一員になれば数々のネイティブアメリカンとしての恩恵を受けることができます)

チェロキーネイションの市民権取得条件

ではチェロキーネイションの市民権の取得条件を見てみましょう。

この条件を読むとチェロキーネイションの市民権を取るための条件は18世紀末に作られたネイティブアメリカンの名簿”Dawes Roll” に祖先の名前が記載されていることとなっています。

ここで記憶の良い人は私が書いた 米先住民02:チェロキーの悲劇02 の中に白人開拓民がインディアンの土地を取得するため5ドルの賄賂を払ってインディアンの名簿に記載してもらい土地を自分のものにしたという記述を思い出すと思います。

Paying to Play Indian: The Dawes Rolls and the Legacy of $5 Indians

“Dawes Roll” にはチェロキー等の先住民と共に全く関係の無い白人開拓民がたくさん記載されているのです。

もう一つ思い出して欲しいのはエリザベスワレンが家族を紹介している動画、 Elizabeth Warren’s family story  の中での下記の二点です。

0:34  彼女のいとこ。チェロキーネイションに正式登録されている人です。
0:43  彼女の母はオクラホマ州西部のインディアン地区で育った人です。

彼女のいとこがチェロキーネイションの市民権を持っているということは彼女の祖先も”Dawes Roll” に登録されているということです。結局チェロキーネイションの市民権を持っている人達と同じなのです。単に市民権を取っているかいないかの違いだけなのです。

チェロキーネイションの人達

Cherokee Nation says Warren must apologize before a 2020 run

この人はチェロキーネイションの人です。エリザベスワレンのニュースについて取材をされ「私は一部がチェロキーではない。私がチェロキーだ、政府が認めたインディアンの部族だ」と強調しています。

この動画のコメント欄では「今まで見た中で一番白人のネイティブアメリカンだ」とコメントしている人がいます。

チェロキーで初めての女医とその家族

Cherokee Almanac: Frontier Doctor Isabel Cobb
チェロキーネイションのユーチューブチャンネルによると上記の動画の中に出てくる写真の女性はチェロキーネイションの市民だとして紹介しています。
ビクトリア時代の服を着ていますから1900年頃に取られた写真です。チェロキーが混じっているとしたら時代的に50%か25%か12.5%ぐらいの割合の混血になり、もっとアジア人的外見になるはずですが全くの白人に見えます。

しかもこちらの家族らしい人達と映っている写真では全員が白人です。

なぜ問題にならないのか

チェロキーネイションを代表している人達の多くが全くの白人に見えるのですが、アメリカ社会ではほとんど問題になりません。なぜなのかその一番の理由はアメリカ人はネイティブアメリカンのことなど全く関心がないのです。ここまで調べてみる人など多分ほとんどいません。

何かニュースになることがあればチェロキーネイションの人にインタビューがあります。しかし「全くの白人みたいだな」とは思ってもそれ以上調べることなどしないのです。

もう少し調べてみるとこの写真のチェロキーネイションのチーフは自分は32分の一チェロキーだと公式に発表しています。「32分の一=3.1%チェロキーだと外見は全くの白人になってしまうのだな」と思ってそこで終わりです。「3.1%でもチェロキーネイションのチーフになれるのだ」とびっくりするだけです。基本的に関心がないのでその程度で終わります。

次にもう突っ込んでチェロキーネイションの市民権取得条件が何なのだろうと調べてみるとネイティヴアメリカンの名簿リスト “Dawes Roll” に先祖の名前が載っていることとなっています。 確かに “Dawes Roll” は政府の作ったインディアン名簿です。 政府のインディアン名簿に載っているというのは強力な根拠になります。 それなら間違いな無いだろうとそこで終わってしまう人もいると思います。

もっと調べてゆくとその “Dawes Roll”には賄賂を使って名簿に載せてもらった多数の白人開拓民がいるという過去がわかります。しかしここまで関心をもって調べる人はいません。基本的にアメリカ人はネイティブアメリカンのことなど全く興味が無いのです。 興味が無い人は現象が見えてもその背後の理由についてまで考えることなどしません

ところが今はDNA検査をすることが簡単にできます。エリザベス・ワレンのDNA検査結果をみるほぼ99.9%白人だということがわかりました。ネイティヴアメリカンの遺伝子だと言われた0.1%は誤差の範囲内片付けられる数値です。一卵性児でさえ別々に調べると2-3%の誤差が出るのです。

では同じ白人開拓民の祖先のいるエリザベス・ワレンの遺伝子検査の結果は99.9%白人と出ましたが、チェロキーネイションのチーフの32分の一というのは本当なのだろうかとそこまで考える人はどれぐらいいるでしょうか?

チェロキーネイションの人達は上記のビクトリア時代のヨーロッパ系の女性がチェロキーであると言っている紹介している人達なのです。

続く:

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