映画評01:「犬ヶ島, Isle of Dogs」

日本を舞台にしたウェス・アンダーソン監督のストップモーションアニメ映画の「犬が島, Isle of Dogs」を見てきましたので感想を書きます。

あらすじ

犬のインフルエンザが大発生をし、メガサキ市は全ての犬をゴミの島へ隔離することを政治的に決定。そこへメガサキ市の小林市長の養子である小林アタリ少年が愛犬を探してゴミの島へ小型飛行機をハイジャックしてこの島にやって来ます。

少年を連れ帰そうとするメガサキ市の市長と警察に少年を取り返えさせない戦いをする島の犬達。また犬のインフルエンザを撲滅しようと薬を開発する愛犬家科学者と高校生の愛犬家たちの戦いも絡みます。

この映画は日本を舞台にしているので出てくる日本人は皆日本語をしゃべります。そして犬達の会話が英語という設定になっています。日本人の日本語がらみの会話は英語ナレーションで説明します。

日本文化の借用

この映画では至る所に昔の日本の風景と浮世絵風と屏風画風の絵が使われています。過去の出来事の説明は浮世絵風の絵に犬を加えたり、屏風画の絵を改変したりしています。そのためカラフルな浮世絵風の絵が背景等で次から次へと出てきて退屈しません。

しかし出てくるメガサキ市の風景は1950-60年代と思える昔風のものが多く、20年後の未来と言いながら50-60年ぐらい過去の懐かしい昭和風の風景です。

映画の中でたくさん日本語が使われています。しかしところどころ変な日本語があります。ゴミが島の海岸で「着陸禁止」という標識が出ているのですが正確には「上陸禁止」ですよね。もっとも画像的にも変なところもたくさんありますが、どちらにしても架空の世界の物語ですから許容範囲内かも。

メガサキ市を支配する小林市長という設定がかなりファシスト的、ヤクザ的な雰囲気があります。実際小林市長は背中に大きな刺青があるのです。またカブキやサムライの物語風な要素も入れています。

あらすじの展開

日本での公開前にネタバレするのは良くないので書きませんが、次から次へと物語が展開して見どころがあり大作です。101分というのもアニメ映画としては二番目に長い映画だそうです。

ISLE OF DOGS | Official Trailer

白人救世主的要素

このアニメ映画の中はメガサキ市の高校に留学している白人女性徒が愛犬家達のリーダーとなって活躍する場面があります。これを「白人救世主」的なものだと批判する意見もあります。そう問題視すればそうかもしれません。

ハリウッド映画には「White Savior=白人救世主」ジャンルの映画がたくさんあります。主な観客がアメリカ人の場合、世界各地の途上国を舞台にしアメリカ人の主人公が大活躍をする映画の方が親近感があり、気分が良く、観客が喜びますね。トム・クルーズが主人公の「ラストサムライ」も似たようなジャンルです。

これは舞台にされた方の途上国の人達に取ってはかなり不愉快な要素なのです。そのためこの手の映画は「White Savior Films」に分類されています。

White savior narrative in film
https://en.wikipedia.org/wiki/White_savior_narrative_in_film

豪華な声優たち

スカーレット・ヨハンソンとかビル・マーレーとか有名な俳優たちが声優をしています。中にはオノ・ヨーコもいるです。一体どのキャラクターがオノヨーコなのかと考えていたのですが、映画の中で科学者が死んで絶望している助手に「しっかりしろ、ヨーコ・オノ」とフルネームで呼ぶのです。やはりオノ・ヨーコという名前の知名度は衝撃的ですね。誰でも知っています。おまけにおさげの止めにY.O.とイニシャルまで入れてご丁寧にわかりやすくしています。

このようなアニメ映画に有名俳優が出演する一番の理由は有名俳優だからメディアが注目してくれるというものだと思います。しかし普通脇役の出演場面は少ないのです。セリフが10か20ぐらいというのも多いと思います。そんな場合仕事量としては多分一日か二日で済むぐらいの仕事量だと思うのですが一体どれぐらいの出演料を払っているのかも興味津々。

肝心の主役の男の子の声優は Koyu Rankin という 9歳のカナダ人の男の子です。ネットで見たインタビューの時は英語でした。しかし英語の中では日本語をしゃべっていたので声優が日本人に変更になったのかなと思いました。しかし映画を見た後帰ってネットで再度調べてみると彼の母親は日本人で彼は日本語も話すハーフでした。なるほど。

ヒッピー風のテーマ音楽

流れている音楽を聴いて1960年代のビートルズ風のものだなと感じていました。前述の日本の昭和30年代風の風景と映画の雰囲気にぴったり合うのです。帰って調べてみると下記の音楽でした。

The West Coast Pop Art Experimental Band – I Won’t Hurt You

この歌はWest Coast Pop Art Experimental Band という聞き慣れない名前のバンドがまさにヒッピー時代の1966年に作った曲でした。なるほど昭和風の風景と時代的にもぴったり合うはずです。さらに歌の内容もこの映画のあらすじにぴったりです。

私は天国にいたのにあなたを失って今はその反対側にいる。
誰も導いてくれないけど一人で宇宙船に乗って君を見つけにゆくよ。

この歌を作った人達はまさか52年後の2018年にこの曲が注目されるとは思ってもいなかったのではないでしょうか?(歌詞は簡単すぎる要約です)

後で気が付いたのですが、ビートルズ!

犬のインフルエンザの薬を開発していた医師が殺された。残されたて絶望した助手の女性。愛の歌を作り世界を愛で救うジョンレノンは殺され、残された妻のオノヨーコ。一世代を作ったビートルズとオノヨーコのオマージュがここにありました!

監督ウェス・アンダーソン

ウェス・アンダーソンはインタビューでこう言っています。

Isle of Dogs – Wes Anderson Interview

この映画のアイデアは二つの要素を合わせたものです。一つは私は犬のアニメ映画を作りたかったこと。犬達はゴミの中で生活をしておりリーダーと特徴のある名前を持った犬の群れである。もう一つは日本を舞台にした映画を作りたかったこと。

自分は日本にかなり長く住んだことがあるが、それよりもっと大きな影響を受けたのは黒澤明監督の映画と宮崎駿監督のアニメ映画、そして広重と北斎の絵である。

この物語はメガサキ市を大きな力で支配する小林市長が猫を愛し、伝染病にかかった犬達を全てゴミが島に追放する決定をしたこと。そして小林市長の養子の息子であるアタリ少年が自分の愛犬を探してゴミが島に行くことから始まります。

映画の公開日

アメリカでの公開日は3月23日、日本での公開日は5月25日となっています。日本での公開はアメリカ公開より2か月遅れとなっています。このリビューを読んで映画を見てみたいと思った人はいるでしょうか?

感想 ★★★★★

雰囲気と表現方法が素敵

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コメント

  1. 晴れ旅 より:

    すごく見てみたくなった!!
    レビューありがとう
    待ち遠しいなぁ・・・(^-^)

    • kirohan より:

      晴れ旅さん、書き込みありがとうございます。
      リビューを気に入って貰えて嬉しいです。

      オノヨーコが日本語版にも出演しているかどうかは知りませんが、
      とても良い映画なのでおすすめです。