車住族23:ボブ・ウェルス 01

車住族の教祖のような存在になりつつあるボブ・ウェルスとはどんな人なのか紹介します。

車住生活の経緯

現在の年齢は62歳。アラスカ州の出身です。学校を出てからはずっとアラスカにある全国チェーンのスーパーマーケットに勤めていました。理由は父親がそのスーパーマーケットで働いていたからです。父親は必死に働いてマネージャーにまでなりましたが、彼は30年以上務めましたがアシスタントマネージャー止まりだったそうです。しかし名の知れた全国チェーンのお店だったため福利は充実していたそうです。

40歳の時に離婚。妻への慰謝料の支払いのため半分になった手取りの給料は1200ドル。当時アパートの家賃が800ドルだったため生活ができなくなりました。アラスカ州は寒冷地で農産物の生産もほとんど無く、かつ遠隔地にあるため運送費がかかり物価や生活必需品が超高いことで有名です。

そんな苦境に陥っていた時ふと道に停まっている大きな貨物バンが目につきました。その車を見てふとこの車の中に住めるのではないかと思いついたのだそうです。そしてバン車を購入。初めてそのバンの中で寝た時は泣いたそうです。

ところがしばらくすると段々車住生活が快適に感じるようになりました。家賃を払う必要がないので給料はそのまま自分の使える金額になります。その後妻への慰謝料の支払いが終わり、一人息子も18歳になり、給料の全てが自分で使えるようになると快適さは倍増。車住生活を楽しむようになりました。

5年後に二度目の結婚をして新しい妻が持っている家に住むようになりました。ところが車住生活を長い間続けていたため彼女の家が無駄の塊のように思えてきたそうです。広い家でたくさんの部屋はあるのですが、ほとんど使わないものばかりなのです。その後二人でアメリカ東部へ移住しました。

彼の努めていたスーパーは企業年金がきちんとしていたため彼は52歳で早期退職をすることにしました。後は車に乗ってアメリア中を旅行をするばかりです。妻は仕事を続けており都会生活を楽しんでおり彼と一緒に旅行するつもりはありません。そしてある時西部に行く時にもう二度と戻ってこないだろうとお互い確信したのだそうです。(まるでドラマ!)それ以来彼は流浪民の生活を続けています。今年で16年目だそうです。

企業年金はもらえるのですが早期退職をしたので多分そんなに多くはないのだと思います。流浪生活をしている間にキャンプ場の管理人やいろいろな仕事をしたそうです。

宗教・価値観

彼はキリスト教の伝統的な価値観で育てられ生活して来たと言っています。しかし同時にクリスチャンの人は不幸だ、今では教会には行っていないと言っています。親の願う通りに真面目に信仰してきたのにクリスチャンんでいることで特に何も良いことはなかったというようなことも言っています。(彼の母親は彼は親の言うことをよく聞くとても良い子だったと述べています)しかしキリスト教会は素晴らしいサポート組織があるのでキリスト教会に属すのは悪くはないだろうとも言っています。

ところがこんなことをネットで言うとユーチューブのコメントでいろんなことを書く人がいます。「あなたは地獄へゆく」という人がいたりします。すると自分は多分普通の人よりもっと聖書を勉強していて理解しているとマタイ伝のヒツジとヤギの話を引用して聖書の話を解説していました。何のことかわからなくて後で調べたのですが、ヒツジは天国へ行く人達、ヤギは神から見放された人達のことです。とても面白い宗教問答だったのですがあの動画は彼のサイトからは無くなっていますね。彼は思考的な人間のようです。

彼の父親は60歳まで働き引退しました。ところがすぐにガンになり62歳でくなったそうです。60歳まで働き続けて引退してこれから人生を楽しもうとした矢先に亡くなったということもあくせく働くのはバカらしいと考え始めた理由のようです。

車住生活をすれば少しのお金で今の人生を楽しむことができる。住む空間は小さいがどこへも自由に移動できるし、車を出れば広い庭と素晴らしい景色がそこら中に広がっている。という考えです。

ユーチューブの動画

彼は自分のウェブサイトは10年以上も前から持っていました。しかしユーチューブの動画はもっと後のことです。最初はジェイミーという同じような車住生活者と共同でユーチューブチャンネルを始めました。しかし登録者が増えて視聴数が増えるとユーチューブ側から広告代の支払いがあります。多分それの分配でもめたのだと思います。いったん解散してそれぞれ別のチャンネルを持つことに決めました。(後で既にたくさんの登録者のいる古いチャンネルの所有権は全てジェイミーにやってしまったようです)

彼が新しい自分のチャンネルを作ったのは2016年の9月です。サイトのコンセプトはいかに安く車住生活をするか自分が10数年間に培ってきた知識を惜しみなく公開すること。毎週3本の動画をアップロードし続けています。そのためわずか1年2か月で登録者10万人到達。その半年後の今の登録者は16万人になっています。(ちなみに古いチャンネルの登録者はあまり増えていなくて現在5万人です。)

しかし登録者が増え視聴数が増えると広告収入が増大します。そのため数々の中傷、勧誘、寄付のお願い、嫉妬のコメント等に悩まされているようです。同時にメディアから出演の誘いやニュースに取り上げられる回数も増えています。

RTR (Rubber Tramp Roundabout) 車住放浪者の集い

RTRは彼が10年程前から主催している車住放浪者達の集りです。最初集まったのは十数人ぐらいだったのですが2018年は3500人ぐらい集まったそうです。この集会でやっていることはいろいろなセミナーをして情報を教えあったり共有したり。お互いに話し合うことで交友関係を作り次に会う時のきっかけにすることです。このセミナーは撮影されており後日ボブ・ウェルスのユーチューブチャンネルに掲載されます。その他に参加者のインタビューもしておりその撮影された動画もボブ・ウェルスのユーチューブチャンネルに載ります。そのため動画のネタが尽きることがなく週に3回も掲載できるのです。

この集会は車住生活者の交友を深め情報交換をする場なのですが、中にはパーティをする場だととらえて参加する人達がいます。パーティだと美味しい食べ物と音楽ですね。音楽を楽しむ人達は賑やかに酒を飲んでギターを弾いて歌を歌って楽しむのが好きです。しかし2017年のRTRでは夜遅くまで歌を歌って楽しんでいた人達にボブ・ウェルスがうるさいから止めろと言ってきて物議をかもしました。2018年のRTRでは参加者の趣味の違いの対策として静かな夜を好む人達、音楽を楽しむ人達の駐車地域を分けました。ところが今度は夜遅くまで音楽を歌って楽しんでいた人達に10時を過ぎたから音楽を止めろと行ってきました。音楽を楽しんでいた取っては水を差されて面白くないですよね。

彼の言い分は BLM(土地管理公社)にRTRの開催許可を取ってこのイベントを主催しているのは自分だから自分のルールに従ってもらうというものです。実際BLMの規則では夜10時を過ぎたら静かにするというのが基本ルールのようです。

彼は自分は内向的な人間だから外交的な人間のように音楽や酒で気分を高揚するのは性に合わないというのです。内向的だから辺鄙な自然の中で一人で過ごすのが性に合っているのだそうです。音楽を歌って酒を飲んで騒ぐのは嫌い。酒もタバコもドラッグもやったことはないと言っています。

しかし内向的な人間が3千人以上の人を集めて集会を行うというのは一体どこが内向的なのだと突っ込みのコメントがユーチューブの書かれていました。(笑

彼が目指していること

彼の他にも車住生活の情報を載せているユーチューバーはたくさんいるのですが彼が他の人達と違うのは明確なビジョンがあることです。特に低収入者に対する深い同情とその苦境を助けることを考えているように見受けられます。彼自身が低収入になり困窮した経験があるからだと思います。

低収入で生活に困っているならこんな解決方法もありますよ。車に住めば雨露はしのげ家賃を払わなくてよく低収入でも生活をしていけますよ。車住生活をすれば好きな所にいつでも移動でき、車を出れば素晴らしい大自然に囲まれた生活ができますよ。車住生活をするにはこうすれば良いですよと様々な方法を教えているのです。

今後彼が目指しているのは各種の指導者を作ること。いろんなわからなことがあると助けを求めることができる情報網を作ること。同じ仲間の集団を作りどこに行けば仲間たちがいるかを明確に分かりやすくすること。仲間にいつでも出会うことができることで新参者でも入りやすくする体制を作ること。そしていつかは広い土地を買って希望者はいつでもキャンプできるような場所を作ることです。

車住族の流行は最近のことなので今後どうなるかわかりませんが、ボブ・ウェルスは確実に新しい生活形態を作る核になっている人です。

ドキュメンタリー映画

彼が出ているドキュメンタリー映画があります。2014年にリリースされたものです。

Without Bound – Perspectives on Mobile Living (Documentary)

続き:車住族33:ボブ・ウェルス 02

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