日本の苗字02:県別分布表の分析

日本の苗字01:県別の割合と分布 の続きです。

日本の苗字県別分布表

オタクな私が日本の苗字のエクセル表を作ったのは2014年でした。時々利用していたのですが最近はコロナで引き籠り中でツイッターにも常駐しています。するとツイッターで「影山」姓について知りたいという人がフォロアーのおすすめに出てきました。

そこで作ったのが下記の表です。「影山」姓は福島県と静岡県に多い姓だということがわかります。東京・神奈川にも多いのですが、地理的・歴史的にみて福島県と静岡県から大都会の東京へ移り住んだ人達ではないかと思います。

表の構成

この表の見方なのですが、一番上の左にあるのが検索する名字。ここに名字を入れるとこの表が出来上がります。一番上の左から二番目がその名字の全国の件数。次が全国順位。次の%はこれらのデータの元になる資料の合計が日本の全人口の23.04%です。ですから全国件数、5775件が23.04%ということは全国の人口に換算するとこの姓を名乗っている人の人数は全国で25070人いるという計算になります。これは全国データから算出したものです。

表の中で右から二番目にある各県別データ率というのは元のデータの数が各県の人口と比較してどれぐらいの%あるかです。元データは電話帳のデータです。各県の人口は平成25年の各県の人口をネットで調べて入力しました。元データの各県の苗字の件数が右から6番目の列にあります。その件数にデータ率をかけると検索した苗字を持つ人の各県の人数になります。一番下の129というのは全国データ率から換算した人数と各県別の人数の合計の差異です。

江戸時代から明治への移り変わり

日本では江戸時代は平民は苗字が無く、明治時代になって平民が名字を名乗ることができるようになったと言われています。しかし江戸時代以前の日本人は皆苗字を持っていたわけです。

江戸時代になり徳川方に付かなかった人達は平民にされました。しかも徳川幕府の政策で侍身分以外の人達は苗字を名乗ることを禁止されたのです。

しかし苗字を名乗ることを禁止されたとは言えどの一族も長く続いている本家がありました。その本家の人達は江戸時代以前の先祖が名乗っていた一族の苗字を知っていたわけです。ですから明治時代になるとその本家と分家の人達は江戸時代以前に名乗っていた名字をふたたび使い始めたのです。

明治時代になって新しく苗字を付けた人達もいます。その人達は多分本家と付き合いが疎遠になったり大都市に行ったまま帰ってこなかった人達の子孫です。本家と付き合いが無くなり何世代か過ぎたあとは江戸時代の前に祖先が使っていた苗字がわからなくなっていた人達もいると思います。その人達が明治になって新しく苗字を付けた人達です。

地方の一族は同じ地方の同じ町や村に先祖代々本家分家が住み続けていました。そのためある地方のある村には同じ苗字を持つ人達がたくさん住んでいるのです。同じ苗字でありながら他人同士と思っていたご近所さんも300年前に遡れば同じ祖先を持つ遠い親戚だったのです。だから同じ地方に同じ苗字が多いのです。

苗字の県別分布表

私が作った県別の苗字分布表の読み方を説明します。注目は県内順位と全国順位のところです。県内順位が全国順位より高く多数の同じ苗字を名乗る人々がいる地域はそこに昔からその名字を名乗る一族がいたということになります。

注目すべき所は県内順位が全国順位よりはるかに高い県です。下の表では「景山」氏が多く住んでいたのは鳥取、島根、岡山、広島という中部地方の県です。最初の「影山」氏とは分布が全然違いますので多分この二つの苗字の関連性はないと思われます。

「金」姓の分布

在日韓国・朝鮮人に多い「金」という姓について調べてみました。

東京・大阪・神奈川に「金」という在日韓国・朝鮮人の姓が多いというのは納得できます。外国人は閉鎖的な地方ではなく他人同士が干渉しあわない都会に住むのを好みます。また新たに違う国に住むには地方より大都会の方が便利です。

しかし北海道と秋田にも相当数の「金」という姓があります。これは一体何なのだろうと調べてみました。すると東北地方に「金=こん」という一族がいるということがわかってきます。

wikipedia: 金氏 (奥州)

wikipedia: 氏(こんし、きんし)は、日本の氏族気仙郡金氏とも呼ばれる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/金氏_(奥州)

平安期以来、気仙、磐井郡(岩手県)を中心に勢力を有した豪族。 安倍倉橋麻呂を遠祖とし、その後裔で貞観元年(859年)に初代気仙郡司として下向した安倍兵庫丞為勝(ためかつ)を始祖とし、貞観13年(871年)に郡内の金山から産出の金を朝廷に献上したことにより金姓を賜ったとしており、後世その末裔を伝える家は多く、金、昆、今、近、紺、金野、昆野、今野、紺野、近野、横山氏などもその流れを汲むといわれる。

「金=こん」姓は平安時代から続く豪族というのですから由緒のある豪族です。江戸時代について記載が無いのは江戸時代は多分侍身分ではなかったからだと推測されます。しかし現在でもこの「金=こん」姓を名乗っている人達がたくさんいるのです。

「今」姓の分布

では「今」姓について分布を調べてみました。するとやはり東北地方秋田・青森・北海道に多いのがわかります。北海道は東北地方から移民した人達が多いので東北地方と似た姓が多いのです。これをみると「金=こん」姓と「今=こん」姓の二つが関係があることがわかります。

「金=こん」姓から「今=こん」一族が分かれたのは鎌倉時代か、室町時代だったのでしょう。多分こちらも江戸時代は侍身分ではなかったと思えます。しかしこれだけ多数の「今=こん」姓を名乗っている人達がいるということは明治時代の初めに一族まとまって再び「今=こん」姓を名乗り始めからなです。明治時代になってから思いつきで「今=こん」姓を名乗り始めたわけではないのです。

このようにして私は面白い姓があると時々調べてはなるほど、なるほどと納得して楽しんでおります。

もし調べて欲しい姓がありましたらお知らせください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする