人物08: ハースト家の人々

以前書いた記事: CA:SLO3 ハースト・キャッスル の関連記事です。

William Randolph Hearst 恵まれた子供時代

William Randolph Hearst は 1863年にアメリカの大金持ちのGeorge Hearst ただ一人の子供として育ちました。母は教育者だったため熱心に一人息子の教育をしたようです。母と息子はヨーロッパの歴史や芸術に触れる長期旅行もしています。当時の大金持ちの長期旅行というのはとても優雅だったと思います。

出版ビジネスの大成功

彼の父は多数の鉱山と土地などを所有していましたが、The San Francisco Examinerという新聞も所有していました。その事業を引きついだ彼は Yellow Journalism という刺激的な手法で大成功、さらにニューヨークなど他地域の新聞も取得して事業を拡大。メディア事業の第一人者となりさらに大金持ちになりました。

新聞事業で大成功した彼は政界にも進出、下院議員にもなりました。大統領選挙にも出ました。しかしこれは不成功。その後政界は引退しました。

ハースト・キャッスルの築城

彼は子供のころから父親が取得したカリフォルニアの山で父とともに山歩きを頻繁にしていたようです。しかし当時は昔風な山小屋でキャンプしていたようです。その土地にハーストキャッスルを作り始めたのはすでに50歳代の終わり頃でした。彼がイメージしていたお城は地中海風のヨーロッパのお城です。彼は子供の頃母親とともにヨーロッパを数年間旅行していました。お金持ちの遊学旅行です。母はヨーロッパの各地に彼を連れてゆきヨーロッパ文化を学ばせたようです。その頃の思い出がヨーロッパ風の城というアイデアに行きついたのかもしれません。

ハースト・キャッスルの設計した人は当時でも珍しい女性の建築家でした。その建築家と相談しながらお城の図面を作っていったようです。しかしこのお城の建築材料は基本的にコンクリート製です。ヨーロッパの伝統的な建築材を使うというところまではこだわっていなかったようです。

アートコレクション

彼のお城にはたくさんのヨーロッパの美術品が飾られています。これらのほとんどはヨーロッパのオークションで収集したものです。しかし芸術品の保存目的ではなく城の装飾品として実際に使うのが目的でした。そのため劣化しやすいタペストリーを飾った部屋での喫煙も行われていました。

現在カリフォルニア州の所有物になったあとは美術品としての保存管理も行われています。

お城でパーティ三昧

彼がこの城で何をしたかと言えばハリウッドの女優や俳優たちをご招待してパーティ三昧でした。招いた客は当時の有名人多数。その中にはチャーリー・チャップリンもいました。彼がなくなったのは1951年で88歳です。お城を作り始めたのが遅かったのですがそれでも20数年はたっぷり楽しむ時間はありました。

私生活・愛人

彼は最初の結婚で5人の息子をもうけています。その後1917年からMason Davis という女優と内縁関係になります。妻とは最後まで離婚をせず別居生活を続けています。

1917年というのはハースト・キャッスルの築城を始める前ですからハーストキャッスルで楽しむというのもこの女優の影響があったかもしれません。この女優との間には一人の娘も出来ていたようです。「ようです」というのはこの娘は Mason Davisの姪として届けられていました。しかし学校や結婚やその他全てのことに置いて William Randolph Hearst が世話をしています。そしてずっと後年彼女が死ぬ前にWilliam Randolph Hearstが父だったと告白しています。

映画「市民ケーン」

アカデミー脚本賞を受賞したオーソン・ウェルズの映画「市民ケーン」アメリカ映画の不朽の名作とされています。問題はこの映画の主人公はWilliam Randolph Hearst(と他の複数の実在の人物)とハーストの愛人である元女優をモデルとしていることです。

当然ハーストは激怒しこの映画を表に出さないようにいろいろは圧力をかけました。彼はこの映画について彼の会社の出版物では一切触れること許さず、かつ彼の持っているコネや金や権力を使いさまざまな形でこの映画を封じ込めようとしました。彼の出版物で一切のリビューやコメントを載せることを許さず、巨大映画館チェーンでの上映をさせないように画策。オーソンウェルスはハリウッドの映画業界から追放しようとしたようです。

ハーストにとって残念なことはこの映画作品自体の出来が非常に良かったことです。下手な作品だと年月とともに忘れられてしまったのですが、作品の出来がよく不朽の名作と言われる程の出来だったためアメリカの映画史上に作品が残りハーストと愛人の物語と彼のした作品封じ込めまで映画史に残ってしまいました。

George Hearst (父)ミズーリ州の丸木小屋で育つ

William Randolph Hearst の父 George Hearst は1920年にミズーリ州に住むスコットランド系の移民の息子として生まれました。丸木小屋で育ち弟と妹が一人ずついました。当時は義務教育などなく彼はきちんとした教育は受けていませんでした。しかし鉱山関係に興味があったため自分で勉強したようです。

鉱山ビジネスで大成功

1946年に26歳の時に父が亡くなり家族の面倒をみることになりました。当時は雑貨店と鉱山関係の仕事をしていたそうです。1949年にカリフォルニアで金が発見されたという情報が広がりました。その情報を確認したあと彼は仲間とともにカリフォルニアへ金鉱を探す旅に出ました。そして10年後に金鉱を見つけ鉱山の経営に成功。大金持ちになりました。

彼が結婚したのは40歳の時です。故郷の町へ帰り近所に住んでいた18歳の女性と結婚しました。結婚したのが遅かったためか子供は一人だけでした。それがWilliam Randolph Hearstです。

彼はその後カリフォルニアの中央部の海岸線の近くに広大な土地を購入して定住しました。現在のハーストキャッスルがある場所です。

彼は後年政治へ進出、カリフォルニア州の知事に立候補するがこれはうまくいきませんでした。しかし1887年に民主党からカリフォルニア州の上院議員に出馬し選出されて1991年に死ぬまで務めています。

Patty Hearst (孫) 大学の寮から誘拐される

William Randolph Hearstは一人っ子でしたが彼は5人の息子と一人の婚外子の娘がいました。ですから彼の子孫はたくさんいるのです。そのたくさんいる孫のうちの一人 Patty Hearstが1974年2月4日、UCバークレー大学の寮から誘拐されました。彼女はその時19歳でした。

彼女は有名な大金持ちの一族でしたのでこの誘拐事件は大ニュースとなりました。しかも誘拐したのは Symbionese Liberation Army という過激左派グループ。当時は反体制派やヒッピー全盛時代、中には政治活動に熱を上げている様々なグループもいました。彼女を誘拐したのはそのような過激な反体制派グループの一つでした。

銀行強盗事件の見張り

彼女の誘拐は大ニュースになり連日メディアが騒いでいる最中の1974年4月3日にサンフランシスコの銀行強盗がありました。その時銀行の監視カメラに写っていたのがパティ・ハースト(パトリシア・ハースト)でした。なんと彼女は銃を持って強盗団の見張り役をしていたのです。そこでまたまたメディアが大騒ぎになりました。1994年に起きたシンプソン事件のような大騒ぎになったのです。

次に彼女が目撃されたのは別の強盗事件の時です。強盗に入られた店のマネージャーと従業員が強盗を追跡。そこで彼らを待っていたパティ・ハーストは追いかけてきたマネージャーと従業員に向かって銃を発射して逃げました。彼らは車を強奪して車の持ち主を人質にして逃げました。その後テロリストグループのアジトに逃げ込み。そこで銃撃戦になり6人のテロリストが死亡。パティ・ハーストは無事だったのですが逮捕されました。

裁判騒ぎ

その後は裁判騒ぎです。弁護側は彼女はテロリストたちに洗脳されていたのだという弁護しました。洗脳されたのかそれとも彼女はバカだったのかという議論もされました。また精神分析をされたり知能指数を調べるたりします。検査の結果では平均以上の知能を持っていることがわかります。結局彼女のしたことは洗脳というよりかなり積極的な関与とみなされ懲役35年の有罪となりました。その後1979年に保護観察処分となり刑務所を出所しました。

ストックホルム症候群

1985年のハイジャック事件でストックホルム症候群という症状が広く知られるようになりました。ストックホルム症候群とは誘拐犯と被害者が一緒に生活しているうちにお互いが仲間意識を持つようになることです。近年では彼女のしたことはストックホルム症候群だったのではないかと言われています。

その後の人生・私生活

彼女は誘拐されるまでは婚約者と一緒に大学寮に住んでいました。しかしこの事件でそれは解消。その後彼女は保釈中だった時の観察役の警察官と結婚。彼との間に二人の子供をもうけました。彼とは2013年の彼が亡くなるまで平穏な結婚生活を続けました。

彼女の私生活はと言えばドッグショーに愛犬を出たりしたのが知られています。それ以外は普通の裕福なマダム生活をしているようです。たまに過去の事件についてのインタビューも出てきます。彼女は現在でも健在です。二人の娘のうちの一人は彼女にそっくりな美人でモデルをしているようです。

 

 

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