人物02:ジャコモ・カサノヴァ 3/3

「カサノヴァの自叙伝」フランス国立図書館所蔵へ

こちらは最新の情報です。2010年にカサノヴァの原稿はフランス国立図書館で保管されることになりました。ベネチア(イタリア)人がフランス語で書いた彼の自叙伝はフランスの国宝になったのです。

http://www.nytimes.com/2011/11/29/arts/casanova-at-the-national-library-in-france.html

この原稿がフランスの国立図書館に行くことになった経緯はこうでした。カサノヴァが書いた直筆の原稿は1940年代まで出版社の金庫に納められたままでした。そして世間一般ではその原稿のことはすっかり忘れ去れてていました。そして第二次世界大戦になり出版社の持ち主は爆撃にあわないように必死でこの原稿を隠します。一時はアメリカ軍のトラックで運ばれたこともあるそうです。こう書くと大層なことのように思えますが、実は原稿は3700ページもあり実際に大層な量なのです。

第二次世界大戦が終わり、1960年に初めて完訳本が出版されて一時的に注目されます。しかしその後も元の3700ページもの原稿のことはすっかり忘れ去られていました。ところが 2007年にベルリンのフランス大使に連絡が入りフランス政府が買い取らないかと持ちかけられます。その時の様子が上記の記事に書かれています。13個の広いが高さはあまりない箱が2枚のテーブルの上に並べられた。それぞれの箱は金の文字で番号が入れられていた。原稿の他にオーストリアの皇帝とやり取りした手紙も含まれていました。この様子はまるでスパイ小説のようですね。

フランス大使は政府に相談。政府の委員会はこれはフランスの宝だとして全会一致で購入を決定しました。しかし購入価格の交渉では二年にも及ぶ長い紆余曲折があり、かなりの難航しました。そして最終的にはある匿名の篤志家が買い取り基金を出すことなりました。支払い金額は $9,6ミリオンドルで買い取られ、その篤志家からフランス政府に寄付するという形をとってフランス国立図書館のものになったのです。

フランス国立図書館の声明では「カサノヴァの自叙伝はフランスの歴史の重要な文化遺産」と述べています。

彼はあの世でどう思っている?

カサノヴァは人生の最初の方で掴んだ幸運を使い果たし、再起をかけて頑張るのですが、結局生きている間に再起はできませんでした。しかし人生最後に情熱をかけて書いた自叙伝が200年後にフランスの文化遺産として永久に保管されることになったのです。ジャコモ・カサノヴァがあの世でこれを知ることができたら「やったぞ!」と快哉をあげているかも知れません。

それとも彼は「生きている内に成功して栄光の人生を送りたかった」と感想を言うかも知れません。しかしもしも彼が栄光の老年を過ごしていたらこの自叙伝を残すことはなかったでしょう。

カサノヴァを描いた映画

カサノヴァはその名前だけでも個性のある人です。そのため小説や映画もたくさん作られています。いくつか見ましたがその描き方はさまざまです。

Il Casanova di Federico Fellini, 『フェデリコ・フェリーニのカサノヴァ』 (1976年)
イタリア人監督のフェデリコ・フェリーニが1976年に製作した映画です。フェデリコ・フェリーニはイタリア人の有名な監督で映画の欄で紹介した「ナイン」のモデルの才能のある監督です。とても芸術的な出来になっています。しかしどこかで読んだのですが彼はもともとカサノヴァはあまり好きでなかったようです。ドナルド・サザーランドの演ずるカサノヴァは強烈な個性があり怖いぐらい。登場人物達の化粧もかなりきつい。全体的にカサノヴァについてかなり辛らつで冷たい描き方をしています。

Le Retour De Casanova / The Return of Casanova, 『カサノヴァ 最後の恋』 (1992年)
主演が今は老年になったアランドロン。カサノヴァが田舎で司書をしている時に若い娘に出会い最後の恋をするというコメディ。正統派ハンサムのアラン・ドロンは確かに若い頃からモテモテだったと思いますが、イメージが固すぎる感じがします。カサノヴァという個人から感じられる不埒さが足りないと思いました。

Casanova, 『カサノヴァ』 (2005年)
ハリウッド映画のロマンチックコメディ。映画をみて楽しい時間を過ごすことが目的で作られたような映画です。

Casanova, 『カサノヴァ』 (1987年)
リチャード・チェンバレン Richard Chamberlainの主演。しかしトレーラーだけしか見たことがありません。

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