DNA検査10:黒人社会に衝撃 03

DNA検査03:黒人社会に衝撃 01
DNA検査04:黒人社会に衝撃 02 の記事の続きです。

アフリカ系アメリカ人とネイティヴアメリカンの混血

POV Why most black people aren’t “part Indian,” despite family lore. 

アフリカ系アメリカ人とネイティヴアメリカンの混血について書かれた記事があります。書いた人はHenry Louis Gates Jr.という黒人の有名な歴史・文学・テレビ司会者です。彼はハーバード大学の教授でもあります。彼が書いたこの記事に面白いことが書かれています。

黒人社会のネイティヴアメリカン先祖伝説

この大学の教授が黒人学生たちに先祖にネイティヴアメリカンがいる人と聞くとほとんどの黒人が手を上げるそうです。ほとんどの黒人家庭に伝説のように祖父母の祖父母の祖父母の内の一人はネイティヴアメリカンだという伝説があります。各家庭でアメリカの地図を見ながら自分達の祖先はこの地域に住んでいたので、その地域に住んでいたネイティヴアメリカンはOXという部族だからこの部族が祖先だというような話が家族内で語り継がれてきています。

大体それらのインディアン部族はアメリカ東南部の地域に住んでいた部族です。これらの家庭内の伝説は祖父や曾祖父の写真の「高い頬骨」「黒くて真っ直ぐな髪」を証拠として見せます。(東洋人は頬骨の高いの嫌う傾向にありますが、頬骨のあまり顕著でない西洋人や黒人は頬骨の高い顔が大好きで高い頬骨は美男美女の証となります)

これらのネイティブアメリカンの言い伝えは強固な信仰のように黒人社会に根付いています。

DNA検査の結果

ところがDNA検査をしてみると意外なことが判明してきました。黒人達が強固に信じてきたネイティブアメリカンのDNAはほとんど無く、驚いたことにヨーロッパ系の割合が非常に高いのです。

遺伝子検査会社の23andMe によるとアメリカ黒人の全体の平均的祖先の人種別DNA構成はアフリカが73%、ヨーロッパが24%、そしてネイティブアメリカンの率はわずかに0.7%なのです。これは黒人たちが信じてきた結果と大きく違っておりDNA検査をした人達はその結果に驚愕してしまいます。

この記事を書いたHenry Louis Gates Jr.が2008年にテレビで自分のDNAの結果を発表した時はこうです。ヨーロッパ=50.5%、アフリカ=48.2%、ネイティブアメリカン=0.7%でした。これをテレビで放送した後、彼の一族は恐慌的状況に陥ったそうです。白人の率の高さについてはあまり問題にされていませんでしたがそれよりネイティブアメリカンの率が驚く程低かったのが大問題だったのです。祖先にネイティヴアメリカンがいるというのが一族の誇りでもあったからです。

親戚のからなぜそんな結果をアメリカ中に発表して一族に恥をかかせた。遺伝子検査のやり方が間違っているのではないか? ひいおばあさんが言っていたことを信じないのか? 過去の先祖の写真を並べてこの人はネイティヴアメリカンに似ているだろう。等々いろいろ言われたそうです。しかし人は嘘をついても遺伝子は嘘をつかない。

実際にはアフリカ系アメリカ人達でネイティヴアメリカンの遺伝子を持っている人達もたくさんいます。しかし非常に少ない割合です。それはどのような環境でアフリカ系アメリカ人の間に組み込まれたのでしょうか。

ネイティブアメリカンの奴隷(1%の背景)

アフリカ系アメリカ人の中の19%が1%のネイティブアメリカンの遺伝子を持っています。そして5%が少なくとも2%以上のネイティブアメリカンの遺伝子を持っています。これはどうしてこうなるのか。

5%の遺伝子がある場合4-5世代前(120-150年前)の祖先の一人がネイティヴアメリカンだったということになります。同様に2%の場合は5-9世代前(150-270年前)。同様に1%の場合は6-10世代前(180-300年前)に一人のネイティヴアメリカンがいたことになります。

違う人種が混血して統計に載るぐらい多くの子孫を残すことになるには両方の人達が多数同じ地域で生活をする必要があります。それがあったのはアメリカの歴史の中でたった一度だけです。約300年前の1715年以前のサウスカロライナ州です。

当時サウスカロライナ州の奴隷の1/3はネイティヴアメリカンでした。しかしその後はネイティヴアメリカンの奴隷の数は減少しました。その代わりにアフリカからの奴隷の輸入が増えました。1714年までに輸入された黒人奴隷の数は29800人だったそうです。ということはネイティブアメリカンの奴隷は三分の一なら約15000人いたということになります。

アフリカから輸入された奴隷の総数は388000人なのだそうです。すると1714年当時ネイティブアメリカンと共に働いていた経験のある奴隷たちの総数はわずか8%になります。その他の92%の黒人奴隷たちのほとんどはネイティブアメリカンの近くで生活をしていた経験は一部の例外を除いてありません。しかし当然黒人社会というものがあります。ネイティブアメリカンとの間に生まれた子供達は長年の間に新規にアメリカ大陸に連れてこられた黒人と混じって現在の19%の人達が1%のネイティブアメリカンのDNAを持つことになったのです。

これで300年前にアフリカ系アメリカ人に組み込まれた1%のネイティブアメリカンの祖先の説明がつきました。理由はネイティブアメリカンがアフリカ系アメリカ人と共に奴隷として働かされていた時代に混血したのです。

黒人奴隷を持つネイティヴアメリカン(2-5%の背景)

5つの文明化された部族 (Five Civilized Tribes)、the Creek, the Choctaw, the Cherokee, the Chickasaw and the Seminole はミシシッピ州、アラバマ州、ジョージア州、フロリダ州の部族です。彼らは古くから西欧人と交流があり、西洋人の文化をまねて黒人奴隷を使っていました。西洋人と同じように奴隷を使用するので「文明化された部族」と呼ばれました。

(ネイティブアメリカンが黒人奴隷を使っていたということで驚く人もいるかもしれませんが、実は黒人の解放奴隷が黒人奴隷を持っていた例もあります。昔は金と権力を持った人達が奴隷を持つことは一部の地域で当たり前のように行われていました。たとえ人道的に問題があるにしても他の人達が普通にやって利益を得ているなら自分も同じことをして利益を享受しようとする人達も出てくるわけです。)

ネイティブアメリカンの一部の部族は1830年代にオクラホマ州の居住地に強制移住されてから1907年のオクラホマ州が成立するまで黒人奴隷を使っていました。1715年以降アフリカ系アメリカ人とネイティブアメリカンの接触はこれ以外全くありませんでした。ちなみに4つの部族で所有していた黒人奴隷の合計は7369人だそうです。結構な数ですね。しかし黒人奴隷の総数である3.9ミリオンのうちのわずか0.2%であり全体的には非常に少数です。

奴隷以外に白人奴隷から逃亡してきた黒人がネイティブアメリカンの部族と一緒に生活をしたのではないかという推測もされています。この説はあったとしても少数です。しかし主人と奴隷の上下関係よりロマンがあります。焚火を囲みながらネイティブアメリカンとアフリカ系アメリカ人達が交友を温め白人に復讐するという夢物語が伝説のように考えられているようです。

従って祖先が1840年から1908年の間にオクラホマ州に住んでいた場合ネイティヴアメリカンのDNAが2%から5%ある可能性のあるアフリカ系アメリカ人もいます。

これで2%から5%の遺伝子がある4-5世代前(120-150年前)にネイティヴアメリカンのDNAを持つアフリカ系アメリカ人の説明がつきます。一部のネイディブアメリカンの部族がアフリカ系アメリカ人を奴隷として使用していた時代に混血したものです。

なぜネイティブアメリカンにこだわる

上記の説明は少数ながら実際にネイティヴアメリカンの遺伝子がある理由の説明です。しかしそれはアフリカ系アメリカ人の19%でしかありません。80%以上のアフリカ系アメリカ人はネイティブアメリカンのDNAを全く持っていません。しかしながらほとんどの黒人家庭にはネイティブアメリカンの祖先の言い伝えがあります。

「高い頬骨」と「黒くて真っ直ぐな髪」は実際は白人祖先から来たにも関わらずネイティブアメリカンの証拠として上げています。実際白人も黒人もほお骨はあまり高くありません。しかし高い頬骨については黒人は平均的に顔が広く、白人は平均的に顔が細いため両方が混じると頬骨が高くなるのではないかと説明しています。

ネイティヴアメリカンもアフリカ系アメリカ人もアメリカの歴史の中では同じように虐げられてきた人達です。しかしアメリカ社会では長い間ネイティヴアメリカンの方が上に見られているのです。自分達が白人との混血であることを考えるとつらい奴隷時代の記憶に向き合わなければなりません。しかしネイティヴアメリカンと考えれば誇りを持つことができるからではないか。と説明をしています。

ラテン系・カリビアン系との混血は除く

上記の記述は純粋な北米のアフリカ系アメリカ人についてです。メキシコ系、南米ラテン系やカリビアン系の黒人との混血の人達は常に非常に高い比率のネイティヴアメリカンのDNAをもっています。従って北米のアフリカ系アメリカ人でもメキシコ系、南米ラテン系やカリビアン系の黒人と結婚して子供ができた場合にはネイティヴアメリカンのDNAの比率は高くなります。しかしそれはまた別の話です。

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