DNA検査02:基本的な理解

まず私は遺伝子学の専門家ではありません。ただDNA検査の結果がわかることでアメリカ人の間で何が起きているかということがとても面白いのでその社会現象を書こうと思います。しかし遺伝子検査の基本的なことをまず把握する必要があります。

遺伝子の受け継ぎ

人間は父母から半分ずつの遺伝子を受け継ぎます。しかしこれらは機械的に全て半分というわけではないのです。たくさんの遺伝子の要素を不規則な比率で受け継ぎます。その結果同じ両親から生まれた兄弟であっても全然違う配合の遺伝子を受け継ぎ外見も性格も能力もかなり違ってきます。それは周りにいる人達の親と子供達を見ると誰でも感じると思います。

世代ごとの遺伝子の比率

2人の両親から子供への遺伝子50% —– 20年から35年前
4人の祖父母から受け継ぐ遺伝子25% —– 40年から70年前
8人の宗祖父母から受け継ぐ遺伝子12.5% —– 60年から105年前
16人の高祖父母から受け継ぐ遺伝子6.25% —– 80年から140年前
32人の5代祖父母から受け継ぐ遺伝子3.12% —– 100年から175年前
64人の6代祖父母から受け継ぐ遺伝子1.56% —– 120年から210年前
128人の7代祖父母から受け継ぐ遺伝子は0.8% —– 140年から245年前
256人の8代祖父母から受け継ぐ遺伝子は0.4% —– 160年から280年前
512人の9代祖父母から受け継ぐ遺伝子は0.2% —– 200年から315年前
1014人の10代祖父母から受け継ぐ遺伝子は0.1% —– 220年から350年前

これらはアメリカの遺伝子分析会社の結果で出てくる遺伝子全体の中にある特定遺伝子の量は0.1%程度までです。0.1%以下というのも出てきますが誤差の範囲にも入る割合です。するとこれらの解析でわかる特定の遺伝子が追加されたことがわかる判定は長くてせいぜい350年前のことまでです。

10代前の0.1%となると1%の10分の一です。220年から350年前は江戸時代ですから。例えば99%日本人の結果が出て0.1%のヨーロッパ人の結果が出た場合考えられるのは江戸時代に長崎の出島にいたオランダ人が父親の子供ご先祖様にいたことが判明するかもしれません。しかしこれは100%の中に一人の違う遺伝子がいた場合です。

しかし上の表の時世の計算が必ずしも正しいとは限りません。混血の人は同じ混血の人と結婚する可能性が高いです。もし先祖にヨーロッパ人の祖先が二人いた場合は220年から350年の時世の計算が倍になって440年から700年前になってしまいますね。となると戦国時代・南蛮人貿易時代も含まれてしまいます。

ハプログループ

女性遺伝子は母から娘へ、男性遺伝子は父から息子へと連綿と続いています。これはプログルームと言います。そのためどのハプログループがどの地域で多く存在しているかをみるといろいろなことがわかります。ハプログループは人類の移動経路を特定するのに使われているようです。

男性遺伝子

歴史的にみて男は遠くまで遠征し現地の妻を娶り定住することが多いです。すると男性遺伝子の行動範囲は非常に広くなります。しかし父と子供達の親子関係を特定する時にはあまり役に立ちません。歴史上、書類上親子であるはずなのですが実際には親子ではないことが多くあります。王妃Bが産んだ子供が実際の王様Aの子供でない可能性もあるのです。結果数百年たった後に子孫の男性遺伝子を元に王様Aの遺伝子を特定することは難しいのです。

男性遺伝子の歴史的な意味

歴史的にみて戦争などで相手国や相手民族の男たちを皆殺しにしても女性は殺さず妻にすることも多くなります。ジンギスカンやモンゴル人がやったことです。すると殺された民族の男性遺伝子は激減し、征服した方の男性遺伝子が拡散します。そのため民族の移動の歴史がわかりやすくなります。

女性遺伝子

女性遺伝子は男性遺伝子に比べ移動範囲が非常に小さいので民族移動を調べるには適していません。しかし母から子供への遺伝を調べる場合間違えることが少ない遺伝子です。祖母が産んだ母、母が産んだ娘、娘が産んだその娘という順にたどってゆけば裏切られることは少ないのです。息子は母の女性遺伝子を受け継ぎます。しかし息子が受け継いだ母の女性遺伝子はその息子世代で終わります。娘から娘への遺伝子を元に数百年前の特定の人の遺伝子を推定することができるます。もっともそのためには女性遺伝子が途絶えることがないように連綿と女性が生まれなければなりません。

単純な話題

私が話題にしようとしているのは遺伝子学についての専門的なことではありません。
もっと単純な話題です。

続く:DNA検査03:黒人社会に衝撃

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コメント

  1. きなきなぷー より:

    色々な事がわかりますね。  アメリカでは(いや、日本でも?) 精子の売買は行われているわけで、優秀な遺伝子を求めて子を生む、という母親の話を聞きます。 そうすると、将来成人した時に、恋愛するようになった男女が、たまたま偶然にも同じ父親の遺伝子だった、、つまりは、遺伝学的には異母兄弟 という事は、起こりうるのではないかな、と思ったりで、、。 数学的な確立としては気にしなくてもいいほど低いのかもしれませんが、、。   日本では、成人期に達した人達が苦悩しているというシンポジウムが開かれたのを新聞で読みました。  自分は本当は誰の子なのか、、自分のルーツがわからないという苦悩、、、もちろん、子供が欲しい、と思い、そういう選択をし、出産した生みの親を恨んでいるわけではない、、親子としての愛情もある、、でも、自分がどういうものからの由来なのか、、という事に思い悩む、という、、、。 生まれる事に対して、選択権のない人達は、成長して、当事者として悩み、解決が見出せない、、というのは、、、、、医学の恩恵なのか、、神の領域に手をつけてしまった事による苦悩なのか、、、
    なんだか考えさせられます、、。

    • kirohan より:

      書き込みありがとうございます!
      遺伝子は嘘をつかないので不都合な真実が明らかになることもあります。

      全ての物事は心の持ちようです。基本的に全ての人間が最高の状態で人生を過ごしているわけではないです。自分の精神のためには自分の都合の良い風に解釈して人生を楽しく過ごした方が楽ですね。