1952年:ロンドンの霧

ロンドンは霧の都として知られています。しかしロンドンの霧は山奥の清く美しい水蒸気でできたロマンチックなものではありませんでした。特に産業革命が始まり第二次世界大戦後の1960年代まで有害な化学物質でできた毒物だったのです。

The Great Smog Attack of London
https://www.youtube.com/watch?v=bSlwGIapFJI
Great Smog of London documentary
(1) https://www.youtube.com/watch?v=Vkx-2mT1-q4
(2) https://www.youtube.com/watch?v=65KZXt1q2jM
(3) https://www.youtube.com/watch?v=cEK7POV8KSk

時は1952年。戦争が終わって7年後の12月5日。その日は特に寒くロンドンの各家庭では一斉に暖房のため石炭をストーブに入れました。当時のロンドンの家庭で暖房のために使われていた石炭は品質の低い硫黄が多く含まれたものでした。高品質の石炭は輸出に回されていたのです。

その日は風もありませんでした。そのため重くて冷たい空気は下層部に留まり、暖かくて軽い空気は上空に昇り、二層の質の違う空気がロンドンの上空を覆っていました。そして冷たい空気の中には石炭から燃焼した硫黄が含まれていたのです。

霧はpea-souper と呼ばれ豆のスープのように黒っぽい黄色でどっしりと重い霧でした。この霧のため視界は非常に悪く1メートルぐらい。外を歩いていると自分の足が見えないぐらいひどいものだったようです。人々は口と鼻をスカーフで覆いできるだけ空気を直接吸いこまないようにして自衛しました。

劇場ではドアの隙間から入ってきたよどんだ空気のため視界が悪化して見えなくなり舞台は中止されました。その日の霧は特にひどい状態だったのですが、普段から似たような霧に慣らされていたロンドンの人々は比較的平静で人々は車にぶつからないように、道路の段差で転ばないように細心の注意を払い帰宅を急ぎました。

この天候状態は12月9日まで4日間続きました。

健康な人達にはあまり影響はなかったのですがこの霧は普段から呼吸器系の病気があったり体が弱い老人や子供たちにひどい影響を与えました。後で統計を取った時わかったのは12月5日の週に提出された死亡届がなんとその前より約4000人多かったのです。統計と研究ではその年の12月から翌年1月までにこのスモッグの影響で早死にした人の数は約12000人いたと考えられています。しかし英国政府が発表している数字は12月中の死者約4000人のみで一月以降の死者はこの時の被害者数には含まれていません。

20021205–BBC Days of toxic darkness
20021205–BBC The Great Smog of London
Wikipedia: Great Smog of London
Wikipedia: Pea soup fog

1950年代は日本でも水俣病が発覚しています。当時は世界中で環境に考慮せず産業振興が盛んだった頃です。イギリスではこのロンドンの殺人霧の後環境問題が重要な課題となり空気清浄化運動が起こりました。当時ロンドンの中心部にいくつかあった石炭を使った火力発電所は郊外に移されました。その後世界中で空気を清浄化する努力がなされるようになりました。

===============================================================
20021205–BBC England_The Great Smog of London
shroud (10421) — 覆い,死者を包む白布,幕,を隠す,包む
standstill (19446) — 行き詰まり,停止(した),行詰り
particulate (8250) — 微粒子

20121205–BBC Great Smog 60 years ‘New laws needed to clean London’s air’
pea-souper — black fog or killer fog
sulphur (21155) — 硫黄
furnace (12592) — 厳しい試練,炉,かまど,暖炉,溶鉱炉,猛烈に熱い所

20141114–wiki Great Smog
anticyclone — large-scale circulation of winds around a central region of high atmospheric pressure
disperse (8738) — 分散させる,散らす,散乱させる,解散させる,分散する
disruption (4684) — 分裂,崩壊,混乱
soot (23161) — すす,すすだらけになる,スス
resultant (10341) — 結果として起こる
tarry — タール質の
seep (11107) — しみ出る,滴下する,漏れる,浸透する,小さな泉
shuffle (7774) — (足)をひきずって歩く,を移し替える
curb (6519) — (犬などを)鎖で御する,抑制する,制限する,留めぐつわ
incandescent (26741) — 白熱の,光り輝く
hypoxia — 低酸素の
pus (25751) — 膿
bronchopneumonia — 気管支肺炎
purulent — 化膿した
bronchitis (11046) — 【病名】気管支炎

20141114–wiki Pea soup fog
soot (23161) — すす,すすだらけになる,スス
distill (8968) — 蒸留する
gauze (21389) — ガーゼ
glimmer (13090) — ほのかに見える,かすかな光,微かな光
solicitor (15381) — 懇願者,事務弁護士,勧誘員,個別訪問の販売員

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする