租税回避03:HSBC銀行

最近の租税回避関係のニュースでよく見かけるのはHSBC銀行です。ニュースをにぎわしている理由はこの銀行のスイス支店が世界中の金持ちを勧誘して脱税のアドバイスをし、大問題になっているからです。フランス、ベルギー、スペイン等の政府から調査が入り莫大な罰金を払っています。

20141117–Belgium Accuses HSBC of Facilitating Tax Evasion_WSJ
20141117–HSBC faces charges of fraud and money laundering from Belgian state
まずベルギーですが脱税サービス、資金洗浄、税金詐欺。具体的にいうとスイスの銀行に所持していたベルギー国民の資金をパナマやバージン諸島へ移動する手助けをしたことです。その背景はスイスの銀行の秘密主義に近年批判が集まり、スイスの銀行口座保持者の各国政府への公開、課税をすることが決まったからです。

欧州連合では2005年から外国で得た収入に対して15%の課税、2011年から35%の課税をすることが決まりました。他にはスイスの銀行の透明化を要求されており世界のお金持ち達がスイスの銀行に口座を持っておく特典はあまり無くなり、いつ秘密の金が政府に見つかるか各国の金持ち達は恐々としていたのです。HSBC銀行はその人達にスイスの口座にある資金をパナマやバージン諸島へ移動する手助けをしていたというのです。

調査の対象となったHSBC銀行の口座を持っていたベルギー国民は約1000人でした。HSBC銀行はベルギー政府に400ミリオンポンドの罰金を払いました。

20141125–HSBC admits fault, is fined by SEC over Swiss bank
20141125–S.E.C. Settles Swiss Banking Secrecy Case With an HSBC Unit
HSBC銀行はアメリカの政府にSEC登録することなくアメリカ国内で投資アドバイスをしたことで12.5ミリオンの罰金を払うことになりました。HSBC銀行は2003年からアメリカの顧客獲得に乗り出し368人の顧客から775ミリオンのお金をあつめました。その勧誘のためSECに登録をしていないのにかかわらず少なくとも40回アメリカに出張して投資のアドバイスをした。(CreditSwissも同じような理由で今年の初め頃 196ミリオンの罰金を払っています。アメリカの司法局はその他のスイスの銀行のいくつかが海外へ税金逃れの手助けをしたという疑惑で調査をしています。)

20130508–HSBC man who passed clients’ details to tax investigators escapes extradition
HSBC銀行がこのような調査を集中的に受けている理由は数年前元HSBC銀行の従業員が銀行の顧客データを大量に持ち出しフランスの政治家に渡したからです。上記の記事の中の写真に出ているHerve Falciani氏です。彼は2008年までHSBC銀行で働いていて2006年と2007年の24000人分の顧客の情報を持ち出しました。スペインで裁判を受けましたが、スイスと法律が違うために無罪になりました。今彼は各国政府がこの情報を調査するのを手伝っているようです。

20141129–A whistleblower who has helped Europeans recover billions in taxes
彼がこの書類を持ち出したおかげで各国政府は莫大な額の税金を回収をしました。フランス、スペイン、イギリスで合計1.34ビリオンUSドルの税金を回収しました。スペインは税金を払うなら脱税の罪は恩赦することにして260ミリオンユーロの税金を回収。しかし悪質で起訴された人も中にはいます。アメリカ司法局はメキシコの麻薬取引業者と北朝鮮、イランの資金洗浄でHSBCを非難しています。2012年の12月にはアメリカ政府に1.9ビリオンの罰金を払うことでこれ以上調査をしないことに合意しました。

イギリス政府はHSBC銀行の顧客リストの人達から今までに135ミリオンの税金を回収した。イギリスは3800人の6800の口座を調査している。まだ13の調査が行われている。ある人は830000ポンドを罰金として払いました。ギリシャ政府は2062人のギリシア人の顧客を調べています。

20141127–Argentina and Belgium Accuse HSBC of Aiding Tax Evasion
20141127–Argentina charges HSBC with aiding tax evasion via Swiss accounts
11月27日になって突然アルゼンチン発でHSBC銀行のニュースが出てきました。税逃れをしたというアルゼンチンの有名な企業や実業家の名前がニュースの中で取り上げられています。詳しく読むとフランス政府が先週HSBC銀行のアルゼンチン人顧客リストをアルゼンチン政府に渡したようです。各国の顧客資料を少しずつ各国の政府に渡しているのが興味深いです。この資料は各国政府の税金回収に確実に役立っていますのでフランス政府はこの資料を渡すことで何かフランスに有利な取引に利用してのでしょうか?

Herve Falciani氏が持ち出した資料は口座数は130000、顧客数は24000人分とされています。UK3800人、ベルギー1000人、スペイン660人、アルゼンチン4040人、ベルギー1000人、USA368人、フランス1500人で合計13430人です。するとまだ1万人以上の顧客リストが残っています。

HSBC銀行はもとは香港の銀行です。Hongkong and Shanghai Banking Corporation というのが本来の名前です。香港の中国への返還で本社をロンドンに移しました。このことから考えると当然のごとく中国人の顧客がたくさんいると思います。残りの調査されていないのは中国関連諸国に籍のある顧客なのでしょうか?今後の展開を見守りましょう。

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20130508–HSBC man who passed clients’ details to tax investigators escapes extradition
20141117–Belgium Accuses HSBC of Facilitating Tax Evasion_WSJ
20141121–HSBC Swiss private banking arm faces tax investigation
20141125–S.E.C. Settles Swiss Banking Secrecy Case With an HSBC Unit
20141127–Argentina charges HSBC with aiding tax evasion via Swiss accounts
20141128–Argentina accuses HSBC of aiding tax evasion
20141129–A whistleblower who has helped Europeans recover billions in taxes

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