租税回避02:秘密の暴露

ルクセンブルグが税金の優遇待遇をして世界中の企業の税逃れに加担してしていたことが暴露されました。租税逃れの暴露はICIJ(International Consortium of Investigative Journalists)が昨年もしていました。しかし今回は特にルクセンブルグに関係した企業を綿密に調べて11月の初めに公表しました。暴露された有名企業の数は340社ぐらいです。

340社のうち日本人でもわかりそうな名前を挙げると以下のとおりです。
Amazon、Aozora Bank、Apple、Citigroup、Coach、Dyson、FedEx Corp、Guardian Media Group、Heinz、IKEA、Nippon Sheet Glass、Office Depot、Olympus Capital, Pepsi Bottling Group、STAPLES、Volkswagen Group、Yamana Gold。

20141105–Luxembourg tax files how tiny state rubber-stamped tax avoidance_TheGardian
こちらの記事では特に Shire, ICAP, Dyson の3社がどのようなやり方で税金を低く抑えていたか説明しています。3社とも日本にはあまりなじみがない会社なのですが、とても詳しく書いています。私は最初から最後までじっくり読んだですが、それを日本語に翻訳するのは時間がかかりすぎるので止めます。

簡単に言えばルクセンブルグに関連会社を作って金に困ってはいないのに借金をし、利息を払って経費として落とします。利息収入を受け取った会社は裏取引で合意した安いルクセンブルグの税率で税金を払うのです。主たる商売をして利益を上げているのはアメリカやヨーロッパの大国です。しかしそれらの国々では借り入れ利息を経費として落として利益を少なくして小額の税金しか払いません。そして貸付利息を受け取ったルクセンブルグの会社はルクセンブルグ政府と裏取引で合意した安い税率、1%以下しか払わないのです。ルクセンブルグは安い税率でもたくさんの企業が数万ドルから数十万ドルの税金を払えば人口50万人の小国では大もうけです。小額の税率でもルクセンブルグの人口で割れば国民一人当たりの儲けは莫大な金額になります。小国のルクセンブルグが豊かな理由にはこんな背景があったのです。

ルクセンブルグの公式税率は28%です。しかしルクセンブルグ当局は特別裏取引をすることでたくさんの外国企業を誘致し金を呼び込んでいます。ほとんどは住所と名前を登録しているだけで従業員が一人だけのような実態なのですが、莫大な預金を銀行に持ってきて税金だけ払います。ルクセンブルグは欧州連合の一員としての立場と恩恵を受けながら裏では欧州連合の他の国から利益を掠め取っているということで批判されています。特に11月に欧州連合の議長に就任したのがルクセンブルグの首相を最近まで18年間務めていたユンケル氏であることもあり大バッシングを受けています。

コネを持つ特定税金コンサルタント会社の関与
20141106–International PwC tax schemes exposed_AFR
これらの租税回避を一番推し薦めている税金コンサルタント会社がPwC(PricewaterhouseCoopers)です。PwCは50万の人口しかいないルクセンブルグでなんと2900人の従業員を抱えている大企業です。PwCの顧客が税金の優遇措置を受けることができるのはルクセンブルグの政府の担当者と密接な裏取引の合意書(=Comfort Letter)を交わして安い税率の契約をしているからです。

上記のサイトの一番下に暴露された会社の名前と資料が出ています。私はそれらの資料を開け細部までは見ていませんが会社名は一覧でわかります。もしこのサイトをじっくり見るのが難しいのでしたら、会社名が出ている場所を Ctl+A で全部選択してコピーし、エクセルに貼り付けて並べ替えれば見やすくなります。企業名をずらっと見ましたが、日本の企業と思える会社は数社しかありませんでした。欧米人がやっている欧米での税回避に日本企業は仲間になって参加していなかったからではないかと思います。

検索可能な秘密のデータベース公開
タックスヘイブンを使ったのは誰かが検索できる秘密ファイル公開(ギガジンの記事)
http://gigazine.net/news/20130615-icij/
http://offshoreleaks.icij.org/
今月公開されたルクセンブルグ関係では日本企業の名前は少なかったのですが、こちらの昨年から公開されているこちらのデータベース(ルクセンブルグに限らない租税回避全世界版)では日本に住所のある個人や企業が533件出ています。こちらのデータもデータをコピーしてエクセルに貼り付けて分析してみました。

内訳ですが、日本人の個人が378名、日本に住む中国韓国系らしき個人が54名、欧米系の名前の個人が41名、企業が51社、金融コンサルタント系らしき会社が9社です。51社の企業の中で無名の名前は関連リンクをたどると中韓系や欧米系の企業らしきものがたくさんありました。また誰でも知っているような日本の大企業が22社ありました。有名商社のほとんどの名前がありました。商社は外国との取引が多いのでこのような外国に関連する税金対策も考えるのだと思います。また金融会社系が多いのは租税回避が金融系業界の金儲け策だからだと思います。2000年以降にできた新しい会社では楽天とニコニコ動画で有名なドワンゴがあったのが目を引きました。

個人名では台湾系の有名人とその家族らしき名前を見つけることができました。しかし普通は名前だけでその人の背景を知ることは難しいですね。でも金持ちや有名人の個人名や関係者をよく知っている人が名前を見たら面白い発見ができるのではないかと思います。こちらのブログ主は統一教会関係者の名前らしきものを発見しています。
http://threechords.blog134.fc2.com/blog-entry-1993.html

製造業系はほとんど見かけませんでした。外国住所の製造業もありますし、私が見たのは日本だけでしたのでこれが全てではないもしれません。しかし日本の製造業は目先の金融対策に頭を使うことをせず製品の品質を追求することに頭を使ってビジネスの場で勝負をして欲しいと思います。長期的にはその方が絶対に良いと思います。現に今回暴露されたことで各社は必死で意味不明の言い訳をしたり、ルクセンブルグの会社を解散したり、会社の住所を変えたりして対策に追われているようです。

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